第一話  入学式



この学園に入学して一日目。
知り合いが全くいないその学園までは電車で2時間+徒歩10分。 なので学生寮に住む事になる。
わざわざこんな遠い学校を行く事になったのにはそれなりの理由が一応ある、と思う。
そう、オレ日暮 魅月は自分が何故このような遠い学校にわざわざ通うことになったのかまだ知らない。

中学の頃そろそろ進路先を決めなければと思っていた時、突然担任に
「おめでとう」
と言われ、家に帰るともうその学校に行く事になっていた。
親や先生に聞いてもあまりよい返答がもらえず、分かった事といえば

政府直属の学校だということ。
入学試験はないということ。
費用が一切かからないということ。
寮制。

これだけ。

「そんな馬鹿な話あるか!」
と思い親や先生に抗議しても母親などニコニコ笑って
「いい話じゃない。試験もないし入学後も一切費用がかからないなんて!」
と肩をどつくだけだし、父なんか
「良くやった。」
とうんうん頷いてみせるだけ。 いや、別に何もしてないんだけど。
先生は
「名誉な事だ!! 我が校初めてだよ、こんな事は!!」
とか何とか言って、腕を高々と掲げてみせた。

・・・みんな狂ってる。

だっておかしいじゃないか。 そんなの。
どこがおかしいって全部。
試験がなくても入れる学校って何だ。
今まで勉強してきたことは何? 
費用がかからないってどうして? 特待生試験だってないのに。
そして自分の息子がそんな謎の学校の寮に入る事になるのにニコニコしてるこの両親!
だいたい政府直属って何だよ。 意味が分からない。

疑問ばかりが募る中、ビデオの早送りみたいに中学校生活は過ぎていき、卒業式を迎え、そして入学式を迎えた。


***


「日本政府直属 TIST学園高等学校」

それがこの学校の名前。 入学式で初めて知った。
・・・・もの凄く変な高校名・・・だと思う。  なんだよティストって。
だけど何だかいちいち文句をつけるのも、もう馬鹿らしく感じていた。
もう入学する頃までには気持ちも冷め、
「何もしないで高校に行かせてもらえるなんてむしろラッキーじゃないか。」
なんて考えるようになっていた。
自分でも驚きだけど,本当にそう思ってしまうんだから仕方ない。


そして入学式会場のホールはとにかく恐ろしいほど広かった。
どのぐらいかというと、大晦日に歌合戦が行われるときのホール。 多分アレくらい。
全校生徒が座っても、まだ他校の全校生徒を迎えられるくらいの余裕があった。



にしても気のせいだろうか。
さっきから妙に人の視線を感じるのは。

こっちを見ながらヒソヒソ話している女子。
指をさして「あれが例の・・・」なんて言っている男子。

気分が悪い。
こっちだって好きでこんな高校来たんじゃないのに入学早々アレ扱いじゃ腹が立っても当然だ。

でも、なんでオレが「例のアレ」?

自分では見た感じ平凡な男子学生のつもりだし、中学時代もけっこう評判が良かった。
女子からの愛の告白を受けることだってよくあった。 只、
「オレのどこが好きなの?」
というと必ず
「カワイイから。」とか 「ツンデレな所」
とか返されることが癪にさわり、一回も付き合った経験がない。
というかそんな告白を受けて付き合う男子がいてたまるか! ていうか「ツンデレ」ってなんだよ、奇抜な日本語だな・・・!

そんな事を思ってたら、校長の祝辞が始まった。
永遠に感じられる時間。
話している事を聞いても普通だし、他の学校と変わりがある事を言っているとはとても思えない。
案外普通の学校なんだろうか。

そして延々と続いた校長の祝辞も終わり、新入生代表の挨拶が始まった。

「新入生代表、須藤 郁。」
「はい。」

落ち着いたテノールの声。
ステージに上がったその新入生代表はスラリと背が高く、眼鏡を掛けていた。
淡い水色が混じった銀髪で、しなやかな長髪を毛先から15cmぐらいの所で束ねている
何だか遠くからでもそこらの人間とは違うオーラが流れているのが分かる。
顔は分からないけど、多分もの凄くかっこ良くて男女ともに人望深くて三年になったら生徒会長とかに推薦されるようなそんなひと人だろうなぁとぼんやり思う。


その新入生代表、須藤郁が何を言っていたのかは覚えていない。
只、聞いているとすごく安心する声でだんだんと眠くなってしまい、うたた寝していたらその挨拶は終わってしまった。

終わってしまった時すごく後悔した。
ちゃんと聞いとけば良かったなぁ・・・なんて思っても時,既に遅し。
後はどこかのお偉いさんや役員の挨拶などが永遠の続き、ひたすら退屈な時間を過ごした。

入学式が終わり、親と長話をした後別れ、寮に向かう。
明日からはもう授業がある。


寮は学園内の奥の方にある、しかし何しろこの学校広さがダテじゃない。
寮まで行くのに迷った時間も込みで30分ぐらいかかった。
その寮は男女あわせて4寮あり、外観はよくある高級マンションのようだった。

自分の寮は、一寮目の最上階。 1001号室。
入学する前に届けられた荷物の中から学生証のカードを引っ張りだし、インターフォンの下の差し込み口にカードを入れた。
金がかかってるなぁ・・・。

高級そうな大理石と思われる広めの玄関。
そこにはもう学校指定の黒い革靴が置いてあった。 

「独り部屋じゃないんだ・・・」
と小声で呟く。 ちょっと残念だ。

奥の部屋からテレビの音が聞こえるので、多分同室の生徒はその部屋にいる。
オレは緊張しながらその部屋に向かった。


そこには・・・


「・・・・あ・・・」
と思わず声が漏れる。

その洒落た眼鏡、銀色の長髪。  新入生代表の・・・

「君が日暮 魅月? オレは須藤 郁。 君のルームメイト。これから宜しく。」

落ち着いたテノールの声。


こうしてオレの学園生活は始まった











*あとがき*
魅月sideで入学式。  いつか郁sideでも書きたい・・・!! うわぁ。 
なんかこう、もっとドタバタ学園モノにしたかったんだけど。
なんか学園ヘブンみたいになってきた・・・!!!!
うへぇ!! どうしよーう。
次は女の子も出せるといいなぁ。 
はやく魅月にツンデレ発揮させたいよ。
ていうかこの神の夢小説以下の文章力どうにかしてェェエエエ!!!!




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